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WAVファイルのタグへのソフト対応状況

「WAVファイルにはタグが無い」、と言い切る方をたまに見かけます。
さすがにこれは無知が過ぎる少数派(或いは、敢えて大袈裟に言っている?)ですが、「WAVのタグに対応してるソフトは非常に限られる」と仰る方は結構多いようです。また、「WAVのタグは各ソフト独自のもので互換性がない」なんてことも時々耳にします。「MP3等を真似て後付でタグが作られた」なんてことをもっともらしく言ってる人もいます。

さて、これらは本当でしょうか?

実はWAVに楽曲情報を記録するタグは幾つもあります。
http://wavmetadata.blogspot.com/
WAVには元々タグがあったんですが、規格が非常に古く、しかも音声と動画の兼用(RIFFコンテナの音声用がWAV、動画用がAVIであり、タグは両者共通仕様)て、非常に欠点の目立つものだったため、これの改良版や全く新たなタグが色々考案された結果です。
しかし、多くのソフトや機器が対応してるのは、下記3種類です。

1.LISTチャンク(システムデフォルトコード、日本語WinではシフトJISコード)
2.LISTチャンク(utf-8コード)
3.id3 チャンク

WAV(RIFF)の仕様書に元々規定されていた本来のタグは1です。
http://web.archive.org/web/20160317062723/http://www.kk.iij4u.or.jp/~kondo/wave/mpidata.txt
(2-14 INFO List Chunk を参照)
この仕様書はMicrosoftとIBMが1991年に規定したもので、MP3のタグより遥かに古いものです。
(因みに、MP3のID3v1タグは1996年にとあるメーカーが自社ソフト用に独自に開発したタグが、後に一般化したもの。ID3v2は初版が1998年に規格化されたもの。)
尚、この仕様書では文字コードについては特に規定が無く、文字コードを全く意識せずにソフトを作り使用すれば自然とシステムのデフォルトコードになりますから、「文字コードはシステムデフォルトコード」と解釈するのが一般的です(これなら、どの地域のどの言語でも扱えます)。
しかし、稀に「文字コードはASCIIコード」と当然のように決めつける傲慢な欧米ソフトがあるので注意が必要です(これだと、英語しか扱えない)。

1は基本的に多言語を同時には扱えません。
2はその点を克服するために文字コードをユニコード(utf-8)に変えたもの。1と2は構造は同じですが文字コードが違うので日本語は互換性が無く、文字化けします。半角英数文字に限り ASCII と utf-8 は同じコードになるため1と2は互換性があるので、2は特に欧米でよく使われる欧米傲慢仕様ですね。
3はMP3のID3v2タグを丸ごとid3チャンクという新たに規定したチャンク(データブロック)内に収めたものです。仕様上、WAVではID3v2タグはそのままでは使えない(WAVはファイル冒頭に「RIFF」という文字列が必要だが、ID3v2はファイル冒頭に「ID3」という文字列が必要なため、両立は不可)ため、このような手段を採っています。
3は構造そのものが1や2とは全く異なるので互換性は皆無ですが、最も高機能。AIFFの主流のタグがこれですが、WAVではまだマイナーですね(ただし、高機能な首都を中心に近年利用が増えている)。
因みに、アートワーク埋め込みが出来るのは3だけ。
尚、1or2と3は同一ファイル中に共存が可能です。

主なフリーの音楽管理ソフトの2017春時点のWAVタグ対応状況は・・・

【初級者向け】
●WMP・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):ライブラリ登録時の読み込み、CDから作成時の書き込みのみ可能(それ以外はライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)
●Groove ミュージック・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み込み可能(読めるのはタグがファイル末尾に書き込まれてる場合のみ?)
●iTunes・・・・・・非対応(ライブラリに記録された楽曲情報のみを読み書きする)
●x-アプリ・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●Media Go・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可

【中上級者向け】
●foobar2000・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(但しLISTチャンクは書き込みにバグあり日本語書き込み不可)
●MusicBee・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(utf-8 または シフトJIS):読み書き可(但しid3読み込みには少々不具合があるっぽい?)
●MediaMonkey・・・・・・LISTチャンク(utf-8 または シフトJIS):読み書き可、id3 チャンク:読み込み 及び 既存id3 チャンクの編集(要設定)のみ可(但しアートワーク除く)
●J RiverMediaJukebox・・・・・・非対応(書き込みは不可、環境によってはLISTチャンク(シフトJIS)の一部情報は読む?)
●Winamp・・・・・・非対応、ただし拡張プラグイン追加でLISTチャンク(シフトJIS)の読み書き可
http://www.win32lab.com/fsw/wpplugin/index.html
●AIMP・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●VLC Media Player・・・・・・id3 チャンク:読み書き可

因みに、Windows10のプロパティ-詳細 で表示出来るのは、LISTチャンク(シフトJIS)。表示が出来るだけで、編集は不可。LISTチャンク(utf-8コード)は半角英数以外は文字化けし、id3 チャンクは認識できません。

・・・当方が主要ソフトと思っているものにつき挙げてみましたが、いかがでしょう(勿論、これで全てではありません)。
当方未確認ですが、窓の杜に紹介されたことで知名度が上がったマルチプラットフォーム対応のClementineなんかも最近は id3 チャンクが読めるらしいです(当方が大昔に試した時は非対応だったが・・・)。
実際、当方ではMediaMonkeyでWAVに付けたタグ(シフトJISのLISTチャンク)が、WMP、x-アプリ、Media Go、foobar2000、MusicBeeでフツウに表示されてます。

因みに、5、6年前ですとMedia Go、x-アプリ、foobar2000、MusicBee、AIMP、VLC Media PlayerはまだWAVタグ非対応でした(尚、Groove ミュージックはまだ無かった)。また、今のJ RiverMediaJukebox(v14)は非対応ですが、これは5年ほど前の有料ソフト・J RiverMediaCenter14をベースに制限を加えた、作りの古いソフトです。

つまり、ここ5年ほどで主要ソフトのWAVタグ対応が今更になって進んでいる、ということみたいです。今や、主要ソフトで完全に非対応なのはiTunesくらいなものでしょう。因みに、有名な有料ソフトのJRiver Media Center、Audirvana などもid3 チャンクに対応していますね。

「対応ソフトは殆ど無い」?
「互換性がない」?
こういう事を仰る方は、最近の状況を把握しておらず、昔の古い情報や知識を元に仰っているのかも知れません(PC関連は変化が早いですから)。
そもそも、これらを仰る人って主要ソフトで唯一非対応のiTunesユーザーが多い印象を受けます。iTunesは元々Macのソフトで、Windowsではあくまで外様。Windowsのファイル形式であるWMAやWAVへの対応は当初から他と比べてイマイチでした。iTunesを「フツウ」だと考えない方がいいでしょうね。アレはむしろ特殊かと。例えば、主要ソフトでFLACに非対応なのも最早iTunesだけでしょ。
「WAVファイルにはタグが無い」のではなく、「iTunesで作ったWAVファイルにはタグが無い」のです。
因みに、3のid3チャンクはAIFFのタグと同じものですので、Appleさんはやろうと思えば簡単にiTunesをWAVのid3チャンク対応に出来るはずなんですけどね。
結局、AppleさんはWAVよりもAppleロスレスやAIFFを使って欲しいんでしょう。

もっとも、WAVのタグって使い勝手はもう一つです。大元の規格が1991年のものですので、欠点が目立ちます。
LISTチャンクはアルバムアートが扱えないし。LISTチャンク(シフトJIS)は多言語が扱えないし。元々の規格になかったトラック番号やアルバムアーティストなど一部項目はソフトにより対応が異なり、互換性がイマイチだし。
また、ファイル中でのタグの記録位置についても混乱(Microsoftは冒頭を推奨してるが、殆どのソフトは巨大ファイルでの実用性の面から末尾に記録する)があって、これが原因でトラブルが起こる可能性もゼロではありません。
id3 チャンクならそうした制約や問題は無いですが、こちらは対応ソフトがまだ少なくて汎用性に難がありますし、id3 チャンクがあると誤動作を起こして再生できないお粗末なソフトや機器もたまにあるようです。

可能であれば、FLAC、ALAC、APEなどの、タグ対応がもっとしっかりしていて、汎用性もそこそこある可逆圧縮形式を利用した方がいいでしょうね(ただ、一番有望なFLACがiTunesでは使えないのは痛い・・・)。
WMAロスレスやTAKはほぼWindows専用、WavPackは対応ソフトが全体的に少なく、汎用性に難があります。TTAは公式なタグの規定が無く、「ID3タグとAPEタグが利用可能」とされてはいるが、どちらが優先かも決まっておらず、ソフトによりID3タグ対応/APEタグ対応/両対応、のようにバラバラなので、イマイチです。



【おまけ1:WAVのタグに対応してる主な変換ソフト】

●dBpowerampMusicConverter・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(編集は有料版のみ)
●XrecodeⅡ・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可、LISTチャンク(utf-8):書き込み可(読み込みは日本語文字化け)
●Xrecode3・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(従来はutf-8だったが最近仕様が変わった模様)
●XMediaRecode・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可
●MediaHuman Audio Converter・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):書き込み可
●Moo0オーディオ変換器・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可
●fre:ac・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):設定により読み書き可、LISTチャンク(シフトJIS):設定により半角英数のみ読み書き可(日本語NG)
●FileConverter・・・・・・LISTチャンク(utf-8):読み書き可


【おまけ2:WAVのタグに対応してる主なタグエディタ】

●STEP_K・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可(プラグイン追加でid3 チャンクも読み書き可)
●mp3infp・・・・・・LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●MP3Tag・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ、LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagScanner・・・・・・id3 チャンク:読み書き可、LISTチャンク(utf-8):読み込みのみ
●AudioShell2・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS):読み書き可
●TagKaeru・・・・・・id3 チャンク/LISTチャンク(シフトJIS/utf-8):読み書き可

音楽管理ソフトが続々とWAVのタグに対応していることを受けてか、MP3TagとTagScannerも2016年になって新たに対応しました。
その他、dBpowerampやXrecodeⅡもタグエディタとして利用可能。
当方は試してませんが、Windows含むマルチプラットフォーム対応でMacやLinuxでよく利用される Kid3、Picard も id3 チャンクに対応してるようです。
あと、編集はできませんが、タグの確認がしたい時はこちらが便利。
http://www.iridoatelier.net/apps/riffinspector/

【追記】
波形編集ソフトのAudacityは、以前はLISTチャンク(utf-8)対応だったのですが、いつの間にかid3 チャンク対応(但しアートワーク除く)+LISTチャンク(ASCII?、非ASCII文字がある項目は書き出さない)対応に変わっていました。Media Goも最近になって新たにid3 チャンクにも対応したようです。正直、変化が早くて当方でも掴みきれません。
WAVのタグに新規対応するソフトもid3 チャンクが多いようですし、どうやら高機能なid3 チャンクへとシフトしていく流れがあるようです。最近では音楽配信サイトでもWAVにid3 チャンクを書き込んでる所も出てきているようです(OTOTOYとか)。
id3 チャンクとLISTチャンクは1ファイル中に共存が可能ですので、現状では流行りのid3 チャンクと昔ながらのLISTチャンク(シフトJIS)を両方書き込んでおくのがベストかもしれません。

【追記2】
id3チャンクは基本的にID3v2タグと同じものなので、当然バージョン(v2.2/v2.3/v2.4)や文字コード(ISO8859-1/utf-16/utf-8)の違いというものがあります。ただ、当方が知る限りではv2.3の利用が主流です。また文字コードはわざわざ古い仕様のISO8859-1なんぞ使うはずもないので基本はutf-16です。これらは固定のものも多いようですが、中には設定で選べるものもあるので要確認。
と言うか、複雑でややこしいID3v2でなくAPEv2にでもすれば、もっとシンプルになったと思うんですけどねえ・・・。

註1:既にお判りと思いますが、ソフトのタグ対応状況はバージョンにより異なる場合があります。
註2:この記事は当初他の所にアップしていたものですが、そのサービスが終了したのでこちらに転載しました。
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